確かに自分の行動と線量計の記録を付き合わせれば、ここへ行ったとき線量が上がっていた、 こちらは低かったと把握することは出来る。しかし暮らしの中でどの程度であればよしとするのかを掴むのは難しい。
ベラルーシのエートスの資料を飜訳したときには住民たちがロシャールさんに「パリはどのくらい?」 と聞いて相場観を作るのに使ったというエピソードも聞いた。
日本の自然放射線は全般に西日本の方が高いというのは知られているが、空間線量と個人が被曝する線量は同じではない。 被曝量は個人の行動と結びついているのだ。
原発事故によって放射線量が増加した地域での個人被曝量を考えるために、 増加していない地域で生活を送る人がどのくらい被曝しているかがおおまかでもわかるといいのではないか? ダイアローグ1日目の終わり頃、江川紹子さんの発言があった。
私たち福島おうえん勉強会は専門家の集まりではないが、協力してくれるボランティアを募ることはできる。
そう考えてすぐに、ネットを通じて協力者を募り、専門家諸氏に意見をいただき、 「比較対象としてはとにかく、興味を持つ人々が自分で測ってみることで理解も深まる」と背中を押していただいた結果が ここに公開した測定結果である。
線量計の貸与、データ読み取り、グラフ化は早野龍五東京大学教授が快く引き受けて下さった。
北海道から九州の全国各地のボランティアに1月20日から一斉に個人線量計を装着をお願いし、1ヶ月の動きを記録した。 おおまかな行動記録を提出してもらい、さらに測定結果を見て追補と感想を求めた。
全国とは言え、各地一人ずつであり、年齢性別職業も異なるためデータとしては目安程度、 調査としては予備調査の計画のための試験と言ったレベルである。しかしながら、 参加者にとっては発見の多い体験だったようで 個々人がどう考えて被曝量を許容するかと話し合うための糸口になるだろう。
これを見て自分たちも調査してみたいと考える、より専門的な訓練を受けたグループ、 自分たちも測ってみたいという意欲的なボランティアが出てきてくれれば私たちの目的の一つは達成されたと考えている。
文末だが企画のきっかけを与えて下さった江川紹子さん、 測ることで自分の問題になるからやってみたら良いよと背中を押して下さったジャック・ロシャールさん、 企画を実現させて下さった早野龍五教授、 発送さらに実質的なまとめを担当して下さった下さったこびとさんたち(スタッフのみなさん)、 発表に際してのアドバイスを下さった安東量子さんに深く感謝いたしたい。 (ナカイサヤカ)
記録
線量計
- D-シャトル(千代田テクノル)
- 小型・軽量(サイズ:68mm×32mm×14mm 重さ: 23g)
- 測定対象線種:γ線
- 電池寿命が長く、連続稼動で1年間使用可能(但し、1 日2 回の頻度で線量を表示した場合)
- PCを用いて、1 年間のトレンドが取得可能
- 携帯電話に近づけても影響なし
- 0.1μSvから測定可能
- 弊社大洗研究所校正施設ですべての線量計を校正済み
- FBNews 2014.01.01 第445号 P.18(PDF)
測定期間
- 2014年1月20日~2014年2月20日
グラフ
- 北海道札幌市:平均 0.06μSv/h 年推定(含自然) 0.53mSv
- 青森県青森市:平均 0.06μSv/h 年推定(含自然) 0.53mSv
- 宮城県仙台市:平均 0.08μSv/h 年推定(含自然) 0.7mSv
- 山形県山形市:平均 0.07μSv/h 年推定(含自然) 0.58mSv
- 茨城県水戸市:平均 0.09μSv/h 年推定(含自然) 0.78mSv
- 東京都台東区:平均 0.06μSv/h 年推定(含自然) 0.53mSv
- 愛知県名古屋市:平均 0.08μSv/h 年推定(含自然) 0.72mSv
- 大阪府堺市:平均 0.1μSv/h 年推定(含自然) 0.86mSv
- 兵庫県神戸市:平均 0.1μSv/h 年推定(含自然) 0.91mSv
- 石川県金沢市:平均 0.09μSv/h 年推定(含自然) 0.81mSv
- 香川県高松市:平均 0.09μSv/h 年推定(含自然) 0.81mSv
- 香川県小豆郡:平均 0.08μSv/h 年推定(含自然) 0.7mSv
- 大分県大分市:平均 0.07μSv/h 年推定(含自然) 0.59mSv
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